24年ぶりに復活を遂げた新型プレリュードに関して、「駆動方式はどうなっているのか?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多くの方が知りたい新型プレリュードの駆動方式の核心に迫ります。
プレリュードの駆動形式は伝統を受け継いでいるのか、新型プレリュードのシステム出力やトルクはどの程度の性能なのか、そしてライバルとは違う新型プレリュードの特徴は何か、といった情報を網羅的に解説します。
この記事のポイント
- 新型プレリュードがFF駆動を採用した明確な理由
- ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」と新技術「S+ Shift」の詳細
- シャシーや足回りに見られるシビックTYPE Rとの関係性
- 競合する後輪駆動(FR)スポーツカーとの決定的な違い
新型プレリュードの駆動方式を徹底解説
- ①プレリュードの駆動形式はFFを採用
- ②なぜFF?ホンダが貫く哲学とは
- ③e:HEVハイブリッドシステムの仕組み
- ④新型プレリュードのシステム出力は?
- ⑤新型プレリュードのトルクは?
①プレリュードの駆動形式はFFを採用
結論から言うと、新型プレリュードの駆動形式は前輪駆動(FF)です。これは、1978年に登場した初代モデルから5代目に至るまで、一貫して守られてきたプレリュードの伝統を受け継ぐものです。
プラットフォームは現行シビックからの流用と見られており、技術的にもコスト的にも合理的な選択と言えます。
FFレイアウトは、エンジンやトランスミッションなどの主要コンポーネントを車体前方に集約できるため、室内空間や荷室の確保に有利な点が特徴です。
新型プレリュードも2+2のシートレイアウトと実用的なハッチバックゲートを採用しており、スペシャルティクーペとしての日常的な使いやすさも重視されています。
このFFの採用は、単なる伝統の継承やコスト面だけの理由ではありません。
ホンダが長年培ってきたFF車の開発技術と哲学が深く関わっています。
②なぜFF?ホンダが貫く哲学とは
新型プレリュードがFFを採用した背景には、ホンダが提唱する「操る喜び」と「誰もが楽しめるパフォーマンス」という明確な哲学が存在します。
車両価格が600万円を超える価格帯では、トヨタのGR86や日産フェアレディZといった競合モデルの多くが後輪駆動(FR)を採用しています。
一般的にFRは、加速時に駆動輪へ荷重がかかりやすく、ハンドリングの素直さから「スポーツカーの王道」と見なされることが多いです。
しかし、ホンダはあえて得意とするFFの土俵で勝負する道を選びました。
ホンダがFFにこだわる理由
ホンダは、高度にチューニングされたFFは、ハイパワーなFRに比べて挙動が予測しやすく、幅広い技量のドライバーに安心感と運転する自信を与えられると考えています。
シビックTYPE Rで証明されたように、FFでも卓越したハンドリング性能は実現可能です。
プレリュードでは、洗練されたサスペンションと電子制御技術によって、駆動方式のヒエラルキーを超越する上質なドライビング体験の提供を目指しているのです。
実際に、フロントのホイールアーチからドアまでの距離が短いデザインは、エンジンを横置きするFFレイアウトの典型的な特徴を示しています。
これは、プレリュードがその伝統と哲学を核に設計されたことの証左と言えるでしょう。
③e:HEVハイブリッドシステムの仕組み
新型プレリュードの心臓部となるのが、ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」です。
これは単なる燃費向上のための技術ではなく、走りの質を大きく高める役割も担っています。
e:HEVは、主に発電を担う2.0Lの直噴エンジンと、発電用・駆動用の2つのモーターで構成されています。
このシステムの最大の特徴は、走行シーンに応じて3つのドライブモードを自動で切り替える点にあります。
e:HEVの3つの走行モード
発進時や市街地など、低速走行時に選択されるモードです。バッテリーの電力だけでモーターを駆動し、静かで滑らかに走行します。ガソリンを一切使わないため、電気自動車(EV)のように走ることができます。
力強い加速が必要な場面で使われるモードです。エンジンで発電した電力でモーターを駆動し、必要に応じてバッテリーからの電力も加えてパワフルに加速します。日常走行のほとんどをこのモードでカバーします。
高速道路での巡航など、エンジンが得意とする高回転域で選択されます。このとき、クラッチが直結され、エンジンの力を直接タイヤに伝えて走行します。モーターを介さないため、エネルギーロスが少なく効率的な走行が可能です。
このように、e:HEVは走行状況に応じてモーター駆動とエンジン駆動の「良いとこ取り」を自動で行う、非常に賢いシステムです。
これにより、スポーツクーペとしては驚異的な燃費性能と、モーターならではのレスポンスの良い走りを両立させています。
④新型プレリュードのシステム出力は?
新型プレリュードのパワートレインは、モーターとエンジンが巧みに連携して性能を発揮します。
ホンダは公式なシステム総合出力を公表していませんが、複数の情報源から約203PSと推定されています。
それぞれの単体でのスペックは以下の通りです。
- 駆動用モーター
最高出力 184PS (135kW) / 5000-6000rpm - 2.0L 直噴エンジン
最高出力 141PS (104kW) / 6000rpm
注目すべきはモーターの出力で、発進から即座に最大トルクを発生させる特性と相まって、俊敏な加速感を生み出します。
システム全体の出力としては200馬力強ですが、フィーリングとしてはそれ以上の力強さを感じられるでしょう。
⑤新型プレリュードのトルクは?
トルクは、クルマの加速性能を左右する重要な指標です。
特にe:HEVのようなモーター駆動を主体とするシステムでは、その特性が色濃く走りに現れます。
新型プレリュードの最大トルクは以下の通りです。
- 駆動用モーター
最大トルク 315Nm (32.1kgf-m) / 0-2000rpm - 2.0L 直噴エンジン
最大トルク 182Nm (18.6kgf-m) / 4500rpm
最大のポイントは、モーターが回転数ゼロから315Nmという、3.0Lクラスのガソリンエンジンに匹敵する強力なトルクを発生させる点です。
これにより、アクセルを踏んだ瞬間からタイムラグなく、力強い加速が始まります。
市街地でのストップ&ゴーや、ワインディングロードの立ち上がりで、この特性が大きな武器となることは間違いありません。
新型プレリュードの駆動方式が生む走り
- ①新型プレリュードの特徴は操る喜び
- ②革新的な仮想変速技術S+ Shift
- ③TYPE R譲りのシャシーと足回り
- ④ドライブモードで変わる走行性能
- ⑤ライバル車種との駆動方式の違い
- ⑥まとめ:新型プレリュードの駆動方式の価値
①新型プレリュードの特徴は操る喜び
前述の通り、新型プレリュードはFF駆動とe:HEVを組み合わせることで、ホンダが追求する「操る喜び」を現代の技術で具現化しています。
その特徴は、サーキットでの絶対的な速さではなく、ドライバーがクルマと一体になれる感覚や、意のままに操れる楽しさにあります。
モーター駆動によるスムーズで静かな走りを基本としながらも、ただ効率的なだけのエコカーで終わらせないための仕掛けが随所に施されています。
FFレイアウトがもたらす素直なハンドリングを土台に、革新的なソフトウェア制御を加えることで、これまでのハイブリッドカーの常識を覆すエモーショナルな走りを提供します。
②革新的な仮想変速技術S+ Shift
新型プレリュードの走りを最も特徴づけているのが、ブランド初採用となる「Honda S+ Shift(エスプラスシフト)」です。
「ハイブリッドやCVTは、エンジン音が盛り上がらず変速感もないから、運転が楽しくない…」そんな風に感じたことはありませんか? S+ Shiftは、その不満に対するホンダからの画期的な回答です。
この技術は、e:HEVのモーター駆動でありながら、ソフトウェア制御によって仮想の8速ギアがあるかのような変速フィールを創出します。
具体的には、加速時にパドルシフトを操作すると、瞬間的にモーターのトルクを抜き、再び与えることで、まるで有段ギアのトランスミッションのような小気味よいシフト感を意図的に作り出します。
さらに、減速時にはエンジン回転数を擬似的に合わせる「ブリッピング」のような制御も行い、聴覚的にもスポーティな感覚を演出。
この体験は、車内のスピーカーから再生されるエンジンサウンド(アクティブ・サウンド・コントロール)と完璧に同期し、ドライバーの高揚感を最大限に引き出してくれます。
注意点:S+ Shiftはあくまで「演出」
S+ Shiftは、機械的なギアで変速しているわけではなく、あくまでソフトウェアによるフィーリングの「シミュレート」です。
そのため、純粋なマニュアル車やDCTのような物理的なダイレクト感とは異なります。
しかし、電動化が進む時代において、コストを抑えながら「操る楽しさ」を追求した、非常にクレバーな技術と言えるでしょう。
③TYPE R譲りのシャシーと足回り
新型プレリュードの走りを支える土台には、世界的に高い評価を受けるシビックTYPE Rをベースとした高剛性シャシーが採用されています。
ただし、その味付けはTYPE Rとは大きく異なります。
プレリュードでは、ロール剛性やスプリングレートなどが、よりしなやかな方向に専用チューニングされています。
これは、サーキット志向のTYPE Rに対し、プレリュードが日常からワインディングまでを気持ちよく駆け抜ける「グランドツアラー(GT)」としての特性を重視しているためです。
足回りには、以下の優れた技術が投入されています。
- デュアルアクシス・ストラット式フロントサスペンション
高出力FF車特有の、加速時にハンドルが取られる現象(トルクステア)を効果的に抑制し、安定した操舵フィールを実現します。 - アダプティブ・ダンパー・システム
4輪のサスペンションの硬さをリアルタイムで独立制御。快適な乗り心地と、コーナリング時の安定性を高次元で両立させます。 - Brembo社製フロントブレーキ
高い制動力と耐フェード性を誇る、信頼のブランドを採用。リニアなフィーリングで、ドライバーに安心感を与えます。
④ドライブモードで変わる走行性能
アダプティブ・ダンパー・システムやパワートレインの制御は、ドライバーが任意に選択できる4つのドライブモードと連動しており、スイッチ一つでクルマのキャラクターを大きく変化させることができます。
- COMFORT
最も穏やかなモード。ダンパーが最もソフトになり、パワートレインの応答も滑らかになります。静かで快適な乗り心地を最優先するモードです。 - GT
プレリュードの基本となるバランスの取れたモード。足回りが適度に引き締まり、パワートレインのレスポンスも向上。長距離ドライブに最適です。 - SPORT
最もスポーティなモード。サスペンションは最も硬くなり、パワートレインは鋭敏に反応。S+ Shiftと連動したサウンドも最もアグレッシブになり、ワインディングで一体感のある走りを楽しめます。 - INDIVIDUAL
パワートレイン、サスペンション、ステアリング、エンジンサウンドなど、6項目を個別に設定可能。自分だけの最適なドライブモードを作り出すことができます。
⑤ライバル車種との駆動方式の違い
新型プレリュードの立ち位置を理解するために、主なライバル車種と駆動方式やスペックを比較してみましょう。
項目 | ホンダ プレリュード | トヨタ GR86 (RZ) | 日産 フェアレディZ (Version ST) |
---|---|---|---|
メーカー希望小売価格 | 6,179,800円 | 約3,518,000円 | 約6,759,500円 |
パワートレイン | 2.0L e:HEV ハイブリッド | 2.4L 水平対向4気筒 NA | 3.0L V型6気筒 ツインターボ |
駆動方式 | FF (前輪駆動) | FR (後輪駆動) | FR (後輪駆動) |
最高出力 (PS) | 約203 (システム推定) | 235 | 405 |
最大トルク (Nm) | 315 (モーター) | 250 | 475 |
車両重量 (kg) | 1,460 | 1,270 | 1,590 |
核心的哲学 | 先進技術のハイブリッドGT | アナログなピュアスポーツ | パワーと伝統 |
この表から分かるように、プレリュードはライバルとは全く異なるアプローチでスポーツクーペの価値を提案しています。
GR86が軽量な車体とFRによるアナログな運転の楽しさを追求し、フェアレディZが圧倒的なパワーを誇るのに対し、プレリュードはe:HEVとS+ Shiftという先進技術による新しい運転体験と、優れた燃費性能を両立させている点が最大の違いです。
まとめ:新型プレリュードの駆動方式の価値
記事のポイントをまとめます。
- 新型プレリュードの駆動方式は伝統的なFFを採用
- FFの選択は「誰もが楽しめる走り」という哲学の現れ
- パワートレインは2.0Lエンジンと2モーターのe:HEV
- 走行状況に応じEV・ハイブリッド・エンジンの3モードを自動切替
- システム最高出力は約203PSと推定されている
- モーターの最大トルクは315Nmで発進時から力強い
- 最大の特徴は仮想8速の変速フィールを生む「S+ Shift」
- S+ Shiftはソフトウェアで官能的な走りを演出する技術
- シャシーはシビックTYPE R譲りの高剛性なものを採用
- サスペンションはGTカーとしてしなやかな専用チューニング
- デュアルアクシス・ストラットがFF特有のトルクステアを抑制
- アダプティブ・ダンパーで乗り心地と安定性を両立
- ドライブモードで快適なGTから刺激的なスポーツまで変化
- ライバルの多くがFRなのに対しプレリュードはFFで差別化
- パワー競争ではなく先進技術と効率性で独自の価値を提案
最後までお読み頂きありがとうございます♪


