日産のフラッグシップミニバン、E52エルグランドのオーナー様、あるいはこれから購入を検討されている方で、「走行中にエンジンが吹けない」「アクセル踏んでも進まない」といった、運転に深刻な支障をきたす症状にお悩みではないでしょうか。
高速道路の合流や坂道で突然加速しない状態に陥ると、大きな事故につながりかねず、強い不安を感じてしまいますよね。
この問題の多くは、E52エルグランドの弱点として知られるCVT故障の症状である可能性が指摘されていますが、必ずしもそうとは限りません。
比較的簡単なスロットル清掃や、その後のスロットル学習で劇的に改善するケースも多々あります。
また、アイドリングの振動や加速時のノッキングといった、見過ごしがちな前兆が隠れていることも少なくありません。
この記事では、E52エルグランドでエンジンが吹けないという問題の根本原因を徹底的に掘り下げます。
さらに、オーナーが直面しがちなスライドドアが開かないといった定番のトラブルから、E52エルグランドの欠点は何ですか?
という購入前の疑問、そしてエルグランドE52の良いところは?
という不変の魅力、さらにはエルグランドの寿命はどのくらいですか?
や、維持費に直結する燃費はリッター何キロ?
といった現実的な情報まで、あらゆる角度からE52エルグランドを総合的に解説します。
この記事のポイント
- エンジンが吹けない、加速しないといった症状の多様な原因と特定方法
- 高額なCVT故障から安価なスロットル清掃まで、具体的な修理内容と費用
- パワースライドドアの故障など、エンジン以外で頻発するトラブルとその対策
- エルグランドの現実的な維持費や寿命、そしてライバルにはない長所と短所
E52エルグランドでエンジンが吹けない原因と対策
- ①アクセル踏んでも進まない、加速しない時の原因
- ②最も多い原因であるCVT故障の症状
- ③アイドリングの振動も重要なサイン
- ④エンジン異音はノッキングの可能性
- ⑤効果的なスロットル清掃のやり方
- ⑥清掃後に必須のスロットル学習とは
①アクセル踏んでも進まない、加速しない時の原因
E52エルグランドでアクセルを踏み込んでも思うように進まない、あるいは全く加速しないという症状が現れた場合、パニックに陥らず冷静に原因を探ることが重要です。
考えられる原因は多岐にわたり、修理費用も数千円から数十万円と大きな幅があります。
最も深刻で経済的負担が大きいのは、やはりCVT(無段変速機)の内部故障です。
しかし、そこに至る前に確認すべき、より一般的で安価に対処できる原因がいくつも存在します。
そのため、診断の鉄則は「安価で簡単な箇所から潰していく」ことです。
いきなりCVTの故障と断定して高額な修理見積もりに頭を抱える前に、基本的な点検から始めるのが賢明なアプローチと言えるでしょう。
加速不良の主な原因候補
- CVT(無段変速機)の内部故障
最も高額。ベルトの滑りやバルブボディの不具合など。 - スロットルボディの汚れ
吸入空気量の制御不良。比較的安価に清掃で改善可能。 - イグニッションコイルやスパークプラグの劣化
点火系の失火によるパワーダウン。消耗品であり交換が必要。 - 各種センサー類の不具合
エアフローセンサーやO2センサーの故障で燃料噴射が不適切になる。 - オルタネーター(発電機)の故障
電力供給不足により、エンジンやCVTの電子制御に異常をきたすことがある。
診断の基本的な流れ
プロの整備士が行う診断プロセスも、基本的にはこの順番に沿っています。
まずは故障診断機(OBD2スキャナー)を接続し、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)に記録されたエラーコード(DTC)を読み取ります。
エラーコードがあれば、その内容に応じた箇所の点検に進みます。
コードが出ていない場合は、点火系(プラグ、コイル)の消耗状態を確認し、次にスロットルボディの汚れを点検・清掃します。
これらの可能性をすべて排除した上で、最終的にCVT本体の詳細な診断へと進むのが、不要な出費と時間を避けるための最も合理的な手順です。
「エンジンは唸るのに、車は前に進まない…」そんな時は本当に焦りますよね。
でも、原因がオルタネーターの故障だったという事例もあるんです。
症状の深刻さと原因の重大さが必ずしも一致しないのが、自動車トラブルの難しいところです。
症状 | 最も可能性の高い原因 | 修理費用の目安 (円) |
---|---|---|
時速30-40kmでの振動、滑り感 | CVT (バルブボディ/ユニット本体) | 500,000 – 700,000 |
アイドリング時の強い振動、パワー不足 | イグニッションコイル (1本あたり) | 15,000 – 25,000 |
発進時のもたつき、アイドリング不安定 | スロットルボディの汚れ (清掃) | 5,000 – 15,000 |
エンジン始動不可、ライトが暗い | バッテリー / オルタネーター | 20,000 – 80,000 |
②最も多い原因であるCVT故障の症状
E52エルグランドの「エンジンが吹けない」というトラブルにおいて、オーナーが最も警戒すべき原因が、やはりCVTの故障です。
このモデルに搭載されているジヤトコ社製のCVTは、滑らかな走行フィールと燃費向上に貢献する一方で、構造的な弱点を抱えており、特に初期モデルではトラブル報告が少なくありません。
CVTの不調は、多くの場合、突然走行不能になるのではなく、特有の前兆を伴います。
これらの初期サインを見逃さず、早期に対処することが、致命的な故障と高額な修理費用を避けるための唯一の道です。
CVT故障の具体的な兆候
- 振動とジャダー
特に時速30~40km程度の低速走行中、アクセルを軽く踏んでいる状態で、車体から「ガクガク」「ブルブル」という微細な振動やジャダーが発生します。これはCVT内部の油圧を制御するバルブボディや、金属ベルトのコマ飛びなどが原因で発生する典型的な初期症状です。 - 発進時のもたつき
エンジンが冷えている状態(冷間時)で、停止状態から発進しようとアクセルを踏んでも、一瞬反応が遅れる、あるいはクリープ現象が極端に弱いと感じられます。症状が進行すると、わずかな登り坂ですら発進が困難になるケースも報告されています。 - 空ぶかし状態(ベルト滑り)
アクセルを踏み込むと「ヴォーン」とエンジンの回転数(RPM)だけが先に上昇し、速度がそれに伴って上昇しない状態です。これはCVT内部でエンジン動力を伝える金属ベルトがプーリーとの間で滑っていることを示唆しており、非常に危険な兆候です。 - 警告灯の点灯
メーターパネル内にエンジンチェックランプが点灯します。診断機で確認すると、CVTの油圧系統の異常を示すPコード(例: P0744, P1778など)が記録されていることが多くあります。
経済的な衝撃:高額な修理費用
CVTの故障がオーナーにとって最大の懸念事項である理由は、その桁違いに高額な修理費用にあります。
ディーラーでCVTユニット全体(アッセンブリー)を交換する場合、部品代と工賃を合わせて50万円から70万円、場合によってはそれ以上の見積もりが提示されることも珍しくありません。
これはもはや「部品の故障」というレベルを超え、中古車の購入価格に匹敵、あるいは上回るほどの経済的インパクトを持ちます。
このような高額修理については、独立行政法人国民生活センターでも注意喚起がなされており、契約前に修理範囲や費用について十分な説明を受けることが重要です。
このリスクを考慮すると、中古のE52エルグランドを検討する際には、CVTの状態を最優先で確認することが絶対条件と言えるでしょう。
③アイドリングの振動も重要なサイン
停車中、信号待ちなどで車内がブルブルと不快に振動するアイドリング不調。
これもまた、エンジンが吹けなくなる前兆や、別のトラブルが潜んでいる重要なサインである可能性があります。
単なる不快感と放置せず、原因を突き止めることが大切です。この振動の原因は、主に以下の3つが考えられます。
第一に、点火系の不調です。
イグニッションコイルやスパークプラグはエンジンの気筒ごとに取り付けられており、ガソリンに点火する重要な役割を担う消耗品です。
これらの一つでも劣化すると、その気筒で正常な爆発が行われず「失火」という状態になります。
これによりエンジンの回転バランスが崩れ、「ドッドッドッ」という不規則で力強い振動が発生します。
第二に、前述の通りスロットルボディの汚れです。
エンジンが吸い込む空気の量を調整するスロットルバルブ周辺に、ブローバイガス由来のカーボンやスラッジが付着すると、バルブの動きが渋くなります。
特にアイドリング時に必要な微量の空気量を正確に制御できなくなり、燃焼が不安定になって「ブルブル」という継続的な振動を引き起こします。
そして第三の、しかし見過ごされがちな原因が、エンジンマウントの劣化です。
エンジンマウントは、エンジンと車体(フレーム)を接続し、エンジンの振動を吸収するためのゴム製の部品です。
これが長年の使用による熱や振動で硬化したり、亀裂が入ったりすると、振動吸収能力が著しく低下し、エンジンの正常な振動ですら吸収しきれずに直接車内やステアリングに伝わってきてしまいます。
特に走行距離が10万kmを超えた車両では、この原因による振動が顕著になります。
エンジンマウントの交換費用について
エンジンマウントの交換費用は、1箇所あたり工賃込みで15,000円から40,000円程度が目安です。
エルグランドのようなV6エンジン車は通常3〜4箇所のマウントで支えられているため、全数交換となると総額は10万円を超えることもあります。
それでもCVT修理に比べればはるかに安価であり、交換後の静粛性向上による満足度は非常に高いメンテナンスの一つです。
④エンジン異音はノッキングの可能性
加速時や登坂時など、エンジンに負荷がかかった際に「カリカリ」「チリチリ」といった、まるで小石がエンジン内部で転がるような金属的な異音が聞こえたら、それはノッキングのサインかもしれません。
ノッキングは、シリンダー内で起こる異常燃焼の一種で、放置するとピストンやシリンダーに深刻なダメージを与え、最悪の場合エンジンブローに至る可能性もある危険な現象です。
ノッキングの最大の原因は、エンジン内部、特に燃焼室やピストントップに堆積したカーボン(煤)です。
このカーボンが高温になって火種となり、スパークプラグが点火するよりも前に、混合気が勝手に燃え始めてしまうのです(プレイグニッション)。
これにより、本来の点火による爆発と衝突する形で異常な圧力波が発生し、異音となって現れます。
また、燃料の質も大きく関係します。
E52エルグランドに搭載されている3.5LのVQ35DEエンジンは、ハイオクガソリン仕様として設計されています。
ハイオクガソリンはレギュラーガソリンに比べて「オクタン価」が高く、自然発火しにくい性質を持っています。
そのため、オクタン価の低いレギュラーガソリンを使用すると、圧縮された混合気が点火前に自然発火しやすくなり、ノッキングのリスクが大幅に高まります。
ノッキングへの総合的な対策
基本的な対策は、第一に指定された燃料(ハイオク)を使用することです。
そして、定期的なメンテナンスが欠かせません。
5,000kmごとのエンジンオイル交換や、メーカー指定距離(約10万km)でのスパークプラグ交換を基本としましょう。
さらに、洗浄効果の高いPEA(ポリエーテルアミン)が配合された燃料添加剤を定期的に使用することで、燃焼室内部をクリーンに保ち、カーボンの堆積を防ぐことが非常に有効です。
いわゆる「チョイ乗り」が多い方は、たまには高速道路などを走行し、エンジンを高回転まで回してカーボンを燃焼させてあげるのも良い対策になります。
VQ35DEエンジン特有の問題として、走行距離が増えるとタイミングチェーンが伸びて、冷間始動時に「ガラガラ」という異音が発生することがあります。
これはノッキングと間違えやすいですが、原因が全く異なります。音がするタイミングや種類に注意して、専門家に見てもらうのが確実ですね。
⑤効果的なスロットル清掃のやり方
エンジンレスポンスの悪化、発進時のもたつき、アイドリング不調といった症状を感じた場合、スロットルボディの清掃は非常に費用対効果の高いメンテナンスです。
専門業者に依頼しても比較的安価ですが、手順を理解すればDIYで行うことも可能です。
ただし、電子制御スロットルはデリケートな部品であるため、手順を誤るとかえって不調を招くリスクも伴います。
スロットルボディ清掃の基本手順
- 安全確保とアクセス
まず、必ずエンジンを停止し、キーを抜いて冷めるまで待ちます。エンジンルームを開け、エアクリーナーボックスからエンジンにつながる太い蛇腹の吸気ホース(エアインテークダクト)を見つけます。そのエンジン側の接続先にある金属製の部品がスロットルボディです。 - ホースの取り外し
スロットルボディに接続されている吸気ホースの金属バンドを、プラスドライバーやソケットレンチで緩めて取り外します。固着している場合でも、無理にこじらず、ゆっくりと揺らしながら引き抜きます。この際、周辺にあるセンサー類のコネクターも破損しないよう注意深く外しておきましょう。 - 清掃作業
スロットルボディ専用のクリーナー(揮発性が高く、コーティングを傷めないもの)と、糸くずの出ない綺麗なウエス(布)を用意します。クリーナーを直接スロットルボディ内部に大量に噴射するのは厳禁です。センサー故障の原因になります。必ずウエスにクリーナーを少量吹き付け、そのウエスでチャンバー内部や、円盤状の弁であるスロットルバルブの表裏に付着した黒いカーボン汚れを優しく拭き取ります。指でバルブを少し開けながら、普段は閉じている部分の汚れもしっかりと除去します。 - 再組付け
清掃が完了したら、取り外した逆の手順でスロットルボディ、コネクター、吸気ホースを元通りに組み付けます。ホースバンドの締め忘れがないか、コネクターがしっかり刺さっているかを最後に必ず確認してください。
【最重要警告】清掃後の必須作業
この清掃作業だけでメンテナンスは完了したと思ってはいけません。
むしろ、ここからが本番です。
次のステップである「スロットル全閉位置学習」および「急速TAS学習」を行わなければ、ECUが清掃前の汚れた状態を基準にしているため、アイドリング回転数が異常に高くなる(2000rpm以上)、ハンチングするなどの不具合がほぼ確実に発生します。
スロットル清掃と学習は、必ずセットで実施する一つの作業だと認識してください。
⑥清掃後に必須のスロットル学習とは
スロットルボディの清掃や、修理のためにバッテリーのマイナス端子を外したりすると、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)が記憶していたスロットルバルブの「全閉位置」に関する学習データがリセットされてしまいます。
ECUは、長年の使用でカーボンが付着し、わずかに閉じきらなくなった状態を「これが正常な全閉位置だ」と学習してしまっているのです。
そこへ清掃を行い、カーボンが除去されてバルブが本来の位置までピッタリ閉じるようになると、ECUの記憶との間にズレが生じます。
このズレのせいで、ECUは「バルブが少し開いている」と勘違いし、アイドリング時に余分な燃料を噴射してしまうため、回転数が異常に高くなってしまうのです。
そこで、ECUに清掃後の綺麗な状態を「これが新しい正常な全閉位置ですよ」と再学習させる作業が不可欠になります。
これを一般的に「スロットル学習」や、日産の正式名称である「TAS学習」と呼びます。
急速TAS学習(アイドル吸入空気量学習)の操作手順
この作業はディーラーでは専用の診断機「CONSULT」を使って数分で完了しますが、特定のペダル操作によってマニュアルで実行することも可能です。
ただし、手順は非常に複雑かつタイミングがシビアであり、一度で成功しないことも珍しくありません。
- エンジンを水温計が通常位置になるまで完全に暖機させ、エアコン、ライト、オーディオなど全ての電装品をOFFにします。ステアリングは直進状態、シフトレバーは「P」または「N」に入れます。
- イグニッションスイッチをON(エンジンは始動しない)にし、3秒きっかり待ちます。
- その直後の5秒以内に、アクセルペダルを床まで踏み込む→完全に離す、という動作を素早く5回繰り返します。
- アクセルペダルを完全に離した状態から、7秒きっかり待ちます。
- 7秒後、アクセルペダルを床まで踏み込み、そのまま保持します。
- 約10~20秒後、メーターパネル内のエンジン警告灯が点滅を始めます。点滅が始まったら成功の兆候です。
- さらに数秒後、警告灯が点滅から完全な点灯に変わったら、3秒以内に速やかにアクセルペダルを離します。
- アクセルペダルを離してから3秒以内にエンジンを始動します。
- そのまま20秒以上アイドリング状態を維持し、アイドリング回転数が規定値(通常650rpm前後)で安定すれば学習は完了です。
この一連のまるでゲームのコマンド入力のような複雑な手順は、機械的なメンテナンスと電子的な再設定が不可分であることを象徴しています。
DIYで行う場合は、手順とタイミングの重要性を正確に理解した上で、自己責任で行う必要があります。
E52エルグランドでエンジンが吹けない以外の疑問
- ①定番の故障!スライドドアが開かない
- ②エルグランドE52の良いところは?
- ③購入前に知りたいE52エルグランドの欠点は何ですか?
- ④エルグランドの寿命はどのくらいですか?
- ⑤実際の燃費はリッター何キロ?
- ⑥まとめ:E52エルグランドでエンジンが吹けない問題
①定番の故障!スライドドアが開かない
E52エルグランドのオーナーを悩ませる、エンジン系の次に多いトラブルが、パワースライドドアの故障です。
便利な装備である反面、重量のある大きなドアをモーターとワイヤーで動かすという複雑な機構のため、経年劣化によるトラブルは避けられない箇所となっています。
「ドアが開かない・閉まらない」「途中で止まってしまう」「開閉時に『ガガガ』という異音がする」「アウターハンドルを強く引かないと反応しない」といった症状は、この車の持病とも言えるほど多くの車両で報告されています。
原因は単一ではなく、複数の部品の組み合わせで発生していることもあり、修理費用もそれに応じて大きく変動します。
原因と修理費用の階層
- 最も安価な対処法(調整・清掃)
ドアの建て付け(チリ)のズレや、レール部分に小石やゴミが詰まっている、あるいはドア下部のローラーが摩耗しているといった物理的な原因で動きが渋くなっているケースです。この場合、簡単な調整や清掃、ローラー交換で直ることがあります。費用は数千円から2万円程度です。 - 中程度の費用(アクチュエーター、ワイヤー交換)
ドアのロックを電動で解除するリリースアクチュエーターの故障や、ドアを引っ張るワイヤーケーブルが切れてしまうケースです。特にワイヤー切れは頻発するトラブルで、修理には部品代と工賃を合わせて片側約50,000円程度の費用がかかります。 - 高額な修理(モーター交換)
ドアを動かすモーターユニット自体が寿命を迎えて故障した場合、費用はさらに高額になります。モーターユニットの交換には、片側で約50,000円から100,000円程度の費用が目安となります。
スライドドアの不調は、利便性が損なわれるだけでなく、半ドアの状態で走行してしまうなどの安全上のリスクも伴います。
特に小さなお子様を乗せる機会の多いミニバンだからこそ、違和感を覚えたら放置せず、早めに専門業者に相談することが重要です。
②エルグランドE52の良いところは?
これまで多くの弱点や故障事例を挙げてきましたが、それでもなおE52エルグランドが多くのオーナーから深く愛され、中古車市場でも高い人気を維持しているのには、それを補って余りある確かな魅力があるからです。
その最大の魅力は、ライバル車にはない、ミニバンの常識を覆す卓越した乗り心地と操縦安定性にあります。
最大のライバルであるトヨタ・アルファード/ヴェルファイアよりも意図的に低く設定された全高と低いフロアは、優れた低重心パッケージングを実現しています。
これに、リアサスペンションに贅沢なマルチリンク式を採用したことが相まって、その走りはまるで高級サルーンのようです。
高速道路での矢のような直進安定性や、カーブが続く山道でのロールの少ない安定したコーナリング性能は、他のミニバンとは一線を画しており、「運転そのものが楽しいミニバン」として、ドライバーから高く評価されています。
また、豪華で快適な室内空間も大きな長所です。
オーナーたちが口を揃えて「まるで自宅のリビングの高級ソファのよう」と評する、厚みとクッション性に優れたシートは、E52エルグランドの真骨頂です。
特に2列目のキャプテンシートにはオットマンも装備され、その快適性は特筆ものです。
長距離移動でも同乗者が疲れにくいと評判で、内装全体のデザインやソフトパッドを多用した素材の質感も非常に高く、所有する喜びと満足感を満たしてくれます。
忘れてはならないのが、3.5Lモデルに搭載された名機「VQ35DE」エンジンです。
そのシルクのように滑らかで、どこまでも力強い加速フィールは、多人数乗車時や高速道路の合流など、あらゆる場面でドライバーに絶対的な安心感と余裕をもたらしてくれます。
この走りの質感こそ、エルグランドが「キング・オブ・ミニバン」と呼ばれる所以ですね。
③購入前に知りたいE52エルグランドの欠点は何ですか?
E52エルグランドの購入を検討する上で、その魅力的な長所の裏にある欠点や弱点を正しく理解しておくことは、後悔しない車選びのために非常に重要です。
これまで述べてきたCVTの信頼性の問題と、それに伴う高額な修理リスクが最大の弱点であることは間違いありません。
実用性の面では、やはり最大のライバルであるトヨタ・アルファード/ヴェルファイアと比較されることが多く、いくつかの点で明確に不利になります。
低重心設計の代償として、室内の絶対的な高さ(特に後席のヘッドクリアランス)で劣ります。
また、3列目シートの格納方法が、床下に収納できるライバルとは異なり、前方へ跳ね上げるタイプのため、荷室の最大スペースを確保しにくく、使い勝手で一歩譲るという声も多く聞かれます。
その他の主な欠点・注意点
- 下回りの錆
これは構造的な弱点の一つです。特に後輪周辺のサブフレームや、リアエアコンの配管に錆が発生しやすい傾向があります。エアコン配管の錆が進行すると、腐食により穴が開いてガス漏れを起こし、高額な修理につながります。降雪地域で使用された中古車を検討する際は、購入前にリフトアップしての下回りチェックが必須です。 - Aピラーによる死角
スタイリッシュなデザインを実現するために、フロントガラスを支えるAピラーが太く、大きく傾斜しています。これにより、特に右左折時の斜め前方の視界が妨げられ、歩行者や自転車を見落としかねない大きな死角を生み出しています。試乗の際には必ず確認すべきポイントです。 - 燃費性能
2トンを超える重量級のボディにハイブリッドモデルが最後まで設定されなかったため、燃費は総じて悪いです。特に3.5Lモデルの市街地燃費は覚悟が必要です。 - 装備の古さ
モデルライフが長かったため、インフォテインメントシステムや安全装備の面では、現在の基準で見ると古さを否めません。例えば、ライバル車には標準装備されている運転席SRSニーエアバッグが設定されていないなど、細かな点で見劣りします。
これらの長所と短所は、日産が「バンとしての最大限の実用性」よりも、「高級車としての卓越した走行性能と快適性」を最優先したという明確な設計思想の表れです。
どちらの哲学が自分のライフスタイルや価値観に合っているかが、E52エルグランドを選ぶ上での最も重要な判断基準となります。
④エルグランドの寿命はどのくらいですか?
E52エルグランドの寿命は、一概に「何年乗れる」「何万キロ走れる」と断言できるものではなく、いかに適切なメンテナンスを継続的に行ってきたかに大きく左右されます。
しかし、そのポテンシャルは非常に高いと言えます。
心臓部であるQR25DE(2.5L)やVQ35DE(3.5L)エンジンは、日産の長い歴史の中でも特に頑丈なことで知られる名機であり、定期的なケアを怠らなければ非常に長持ちします。
一般的な目安としては、走行距離20万kmから25万kmが一つの節目とされていますが、これはあくまで平均的な数値です。
中古車市場では30万kmを超えて走り続けている個体も珍しくなく、オーナーの愛情とメンテナンス次第では、それ以上の長寿も十分に可能です。
車の耐久性については、国土交通省の統計でも、近年の自動車の平均使用年数が長期化していることが示されており、適切な管理が寿命を延ばす鍵となります。
寿命を大きく左右する最重要メンテナンス
- エンジンオイル交換
5,000kmごと、または半年に一度の交換が推奨されます。これはエンジンの健康を保つための最も基本的かつ重要なメンテナンスです。これを怠ると、エンジン内部の摩耗が進み、寿命を著しく縮めます。 - CVTフルード交換
メーカーは無交換をうたうこともありますが、これは大きな間違いです。CVTの寿命を延ばすためには、40,000kmから50,000kmごとの定期的なフルード交換が絶対に不可欠です。これを怠ることが、高額なCVT故障を引き起こす最大の原因となります。
結局のところ、E52エルグランドの寿命は「車両そのものの限界」ではなく、「オーナーがどれだけ愛情とコストをかけて予防メンテナンスに投資できるか」によって決まると言っても過言ではないでしょう。
⑤実際の燃費はリッター何キロ?
大型で重量級のミニバンであり、近年の主流であるハイブリッドモデルが存在しないため、燃費性能はE52エルグランドの明確な弱点です。
購入を検討している方は、特にガソリン価格が高騰している現在、燃料費がある程度かかることを十分に覚悟しておく必要があります。
日産が公表しているカタログ燃費(WLTCモード)は、あくまで特定の条件下での理想的な数値であり、実際の燃費(実燃費)はこれを下回ることがほとんどです。
エンジン | 駆動方式 | 総合 (km/L) | 市街地 (km/L) | 高速道路 (km/L) |
---|---|---|---|---|
2.5L (QR25DE) | 2WD | 10.0 | 7.0 | 11.7 |
2.5L (QR25DE) | 4WD | 9.7 | 6.9 | 11.3 |
3.5L (VQ35DE) | 2WD | 8.7 | 5.7 | 10.5 |
3.5L (VQ35DE) | 4WD | 8.4 | 5.5 | 10.2 |
(出典:日産自動車公式サイト e-燃費)
実燃費に関するシビアな現実
多くのオーナーからの報告や燃費記録サイトを見ると、実際の燃費は、運転スタイルや交通状況に大きく左右されます。
特に渋滞の多い市街地走行がメインの場合、これらの数値を大幅に下回ることが多いようです。
特に3.5Lモデルの市街地走行では、実燃費がリッターあたり4~5km程度に落ち込むことも珍しくありません。
高速道路を一定速度で巡航すればリッター10kmを超えることも可能ですが、日々の維持費を計算する上では、総合的な燃費にはあまり期待しない方が精神衛生上も良いでしょう。
まとめ:E52エルグランドでエンジンが吹けない問題
E52エルグランドは、卓越した魅力と無視できないリスクを併せ持つ、二面性のある車です。
この記事で解説した内容を最後にまとめます。
- E52エルグランドでエンジンが吹けない主な原因はCVT故障、点火系不調、吸気系の汚れなど多岐にわたる
- 診断の鉄則は安価で簡単な箇所から、つまりスキャナー読取り、点火系確認、スロットル清掃の順で行うのが効率的
- 最も警戒すべきはCVT故障であり、修理には50万円以上の高額な費用がかかる可能性があるため予防保全が重要
- CVT故障の初期症状には低速走行時のジャダーや発進時のもたつきなどがあり、見逃してはならない
- アイドリング時の不快な振動は、点火系の失火やエンジンと車体を繋ぐエンジンマウントの劣化が主な原因
- 加速時の「カリカリ」という異音はノッキングの可能性があり、指定通りハイオクガソリンの使用や燃料添加剤が対策になる
- スロットルボディの清掃はレスポンス改善に効果的だが、電子部品のためDIYでの作業には細心の注意が必要
- スロットル清掃後はECUの再学習(TAS学習)が必須であり、これを怠るとアイドリングが2000rpm以上に跳ね上がる不具合が起こる
- エンジン以外の定番トラブルとしてパワースライドドアの故障が非常に多く、モーター交換では10万円近くかかることも
- E52エルグランド最大の長所は、ライバルを圧倒するミニバン離れした走行安定性と、まるで高級ソファのような豪華な内装
- 一方で、室内高の低さや荷室の使い勝手、そして現代の基準では厳しい燃費性能が明確な欠点として挙げられる
- エンジンの耐久性は高いが、車の寿命はメンテナンス次第であり、特にCVTフルードの4〜5万kmごとの定期交換が鍵を握る
- 実燃費はシビアで、特に3.5Lモデルの市街地走行ではリッター5km前後になることも覚悟する必要がある
- 結論として、E52エルグランドは単なる移動の道具ではなく、その弱点を理解し、予防的なメンテナンスを積極的に行える熱心なオーナーにとって、かけがえのない満足感を与えてくれる一台である
最後までお読み頂きありがとうございます♪



